明治三〇年代には、安浦(旧字板木)の〓蛯谷金太郎(嘉永三・一八五〇生)の妻スミ(嘉永六・一八五三生)が大野村の実家天野家から牛をもってきた。同家には草刈り場といわれた広い牧草地があった。
蛯谷家に、明治の牛の控がある。(蛯谷正勝所有)
明治三一年一〇月五日、牛一七頭売却、と記されている。売却一七頭のうち、八頭は当歳の仔牛である。
牛は仔をとるために飼っていたと聞いている。当時は漁家で、牛乳を日常飲用としていなかった。
売却の牛
牝 四尺五寸 四歳 赤クロ
〃 三尺二寸 四歳 クロ
〃 三尺六寸 四歳 赤白
牡 一尺九寸 一歳 明治三一生 赤
〃 一尺八寸 一歳 明治三一生 赤
牝 二尺 一歳 明治三一生 赤
〃 一尺九寸 一歳 明治三一生 赤
〃 二尺一寸 一歳 明治三一生 赤
〃 三尺二寸 三歳 赤
牝 三尺八寸 五歳 黒
〃 三尺九寸 五歳 黒
〃 三尺一寸 五歳 赤
牡 二尺二寸 一歳 明治三一生 赤
〃 二尺 一歳 明治三一生 赤
〃 一尺九寸 一歳 明治三一生 黒
牝 二尺五寸 二歳 明治三一生 赤
〃 二尺九寸 三歳 明治三一生 赤
同年一一月二六日、大野の天野為吉、七右衛門より牛一一頭買入とある。
この売却と買入に意味があったかもしれないが、牛が飼われていたことと、牛の売買が大野方面と板木(安浦)との間で行われていた経済交流のあったことを示す資料でもある。
買入の牛
牝 四尺 六歳 白黒
〃 三尺九寸 六歳 赤白黒
牝 二尺 一歳 黒
牡 二尺 一歳 黒白
〃 三尺 二歳 赤
〃 四尺五寸 四歳 黒
〃 三尺 三歳 黒
〃 三尺四寸 四歳 赤白
〃 二尺 一歳 赤
牝 二尺 一歳 赤
〃 二尺 一歳 赤
さらに同家の明治末期の畜牛の控をみると、子牛と親牛との関係で、大野産以外に親牛のところに桔梗産の控書きがある。また、函館売りという記録もある。
産 父母
第一号 キヌサト 牝 四尺二寸五分 明治三五・二生 赤斑 キヌウラ
第二号 キヌウラ 牝 四尺 明治三七生 赤斑 キヌ川
第三号 桔梗 牝 四尺一寸 明治三六・三(七)生 赤斑 桔梗村産
第四号 ヨツシロ 牝 四尺一寸五分 明治三九・六・八生 白赤 キヌサト
第五号 第三小粕 牝 三尺 赤白 小・ 八中村行
第六号 岩手 牡 二尺五寸 明治四三・五・三〇生 赤斑 キヌウラ
第七号 サツキ 牝 三尺七寸 明治四二・五・三〇生 赤斑 キヌウラ
第八号 ヤツハシ 牝 二尺四(五)寸 明治四二・六・二二生 赤斑(白) 桔梗
第八号 ヨシノ 牝 二尺三寸 明治三七・六・一二生 赤 キヌウラ
第八号 カキツ 牝 二尺三寸 明治四二・四・五生 赤 キヌサト
第一一号 岩手 牝 二尺三寸 明治四四・三・二五生 赤白 キヌサト
第一二号 春雨 牝 二尺二寸 明治四四・三・二八生 赤白 ヨツシロ
第一三号 第二ヤツハシ 二尺一寸 明治四四・四・二生 赤斑 ヤツハシ
ミヤキ 牝 二尺 明治四四・四・一二生 赤白 キヌウラ 大正二・四・二七本間松五郎行
第一五号 シノブ 牝 二尺一寸 明治四四・四 一二生 赤白 桔梗
第一六号 ハシタテ 牝 二尺一寸 明治四四・四・一八生 赤斑 ヤツハシ
第一七号 白菊 牝 二尺二寸 明治四五・三・六生 赤白 キヌサト
第一八号 サツキ 牡 二尺一寸 明治四二・四・二四生 ヨシノ 明治四三売
第一九号 小桜 牝 二尺二寸 明治四五・三・一〇生 赤白 サツキ
第二〇号 春風 牡 二尺一寸 明治四五・四・一五生 白斑 キヌウラ 函館・川口売
第二一号 小菊 牝 二尺一寸 明治四五・四・二〇生 黒 ヨツシロ
第二二号 ヨツノ 牝 明治四三・四生 赤白
第二三号 白鶴 牝 二尺五寸 明治四五・五・六生 白黒 岩手
第二四号 折戸 牝 二尺 大正二・三・二生 赤白 第二ヤツハシ
第二五号 第三粕 牝 三尺 赤白
第二六号 山桜 明治四二生 小粕 大正元年一〇 八中村行
第二七号 小春 牝 二尺二寸 明治四五・三・七生 赤白 小粕 大正二・一一 〓蛯谷行