臼尻の南部神楽は、明治三〇年代にはすでに演じられていた。
年の暮れになると稽古を始め、旧正月に公演された。(〓熊谷一作翁談=明治三五生)
一四、五歳のとき臼尻にきた木直の神楽を初めてみた。臼尻では、その前から千小川徳三郎が太夫(師匠)で、鳥舞・三番(さんば)叟・三本こうじ・牛若丸・弁慶・杵(きぎ)舞・盆舞・鬼神お松などが演じられていた。
〓二本柳増太郎・〓小林元三郎・〓二本柳政太郎・田口なよ八(踊)・の小助川平太郎・久の別家〓野村(弁慶)・久二代目野村じゅん吉(三味ひき)・〓加我のばあさんの姉のひと・浜中の小林某・二本柳倉蔵・〓二本柳福太郎が全員だった。
神楽の宿は、大魚住家、の小助川家であった。宿屋をしていたので、芝居などの会場でもあった。ほかに〓津田家も会場となった。
公演は夜で、村中の人たちが楽しみにして見物にいった。花料(はな)をあげて賑やかだった。(荒木ユン談=明治31生)