解題・説明
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弘化3年(1846)アメリカの捕鯨船ローレンス号が難破し、乗員7名が択捉に漂着するという事件が起こった。本図に描かれるのはそのときのひとり「ヘル」という名前の船員である。右上部の解説によればヘルは27歳、身長五尺四寸、茶色い上着と鼠色のズボンを穿くとあるが、本図は褪色が著しい。同志社大学が所蔵する『海表異聞』の第三十二分冊の「丙午漂夷之図」に漂着した7名の人物が色鮮やかに描かれており、そのなかの「ヘル」の着衣は本図の解説と一致する。アメリカ人の漂着はこのあと嘉永元年(1848)のラゴダ号などがあるが、アメリカと直接交流のない当時、本国に送還するには長崎からオランダ船でジャワへ運ばれ、そこでアメリカ行きの船に乗せてもらうなどの方法しかなかった。
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