【浜松在城十七年】家康は浜松に帰ると、駿河府中城を修築し、天正十四年(一五八六)十二月四日、十七年のあいだすみなれた遠州浜松城をさって、正式にここに移った(九月十一日にかりに入城している)。四十五歳であった。
家康は新しい路をいくために、浜松から駿河府中に進んだのである。
松平氏は、家康の時代までかなりすぐれた人物が当主になっていた。安城にでて、岡崎から浜松へと進み、つねに根拠地を一歩前進させている。そして宮廷と幕府という古代権力をできるだけ利用した。賢明な政策である。困難にあたっても熟慮し、たえがたきをしのぶ。松平家を発展させるためである。