【新田村】近世村落をその成立事情からみて、新生の村々と伝統的な郷・庄から分離派生した村々とに大別することができる。前者の例として新田村(前述)のほかに浜松地方では天竜川筋の変遷に起源する村々がとりあげられる。たとえば元禄十六年(一七〇三)の『浜松領諸役御高帳』(『岡部家文書』)によると「国領」十八か村には諸役のうち入草割千石夫が課せられている。これらの村々の多くは「青山御領分絵図」(第五章第二節)からみると、天竜水系の馬籠(まごめ)(込)・安間川上流が近世になってかれて「川原」になった地域に発達した村々であった。【嶋の名の村】その村名に「嶋」が多いことも南部海辺地帯に新生した村々と同様に注意される。【分村の村々 郷より分村】つぎに伝統的な郷・庄から分村する場合の事由や年代はさまざまであった。庄村については一一二ページにふれたので郷村の場合を寛政期の『遠江国風土記伝』によって右のページに紹介する。ただし、地域は浜松地方に限定した。
郡名 | 郷名 | 分村数 | 村名 |
敷智 | 都田 | 2 | 上都田・下都田 |
長上 | 蒲(廿四郷) | 42 | 安間・安間新田・北嶋・薬師・薬師新田・神立・将監名・下・宮竹・宮竹新屋・上之郷・西在所・西塚・丸塚・上新屋・原嶋・笹ヶ瀬・橋羽・永田・植松・大蒲・名切・塚越・西伝寺・渡瀬・次広・別久・青屋・小松方・西之郷・長鶴・竜光・上飯田・下飯田・福増・西大塚・東大塚・新貝・半場・鶴見・安富・庄屋 |
石田 | 2 | 下石田・上石田 |
天王 | 4 | 天王・天王新田・下堀・中田 |
大瀬 | 2 | 上大瀬・下大瀬 |
笠井 | 2 | 笠井・笠井新田 |
寺嶋 | 2 | 打上・寺嶋新田 |
美薗 | 3 | 東美薗・西美薗・油一色 |
高苑 | 1 | 高畑 |
木舟 | 2 | 木舟・木舟新田 |
有玉 | 6 | 松木嶋・新村・上瀬・丁田・畑屋・下 |
本 | 5 | 参野・安松・石原・本郷・弥十 |