前に述べた浜松藩領の形成と関連して他領すなわち天領・旗本領・寺社領他大名領がしだいに形成せられ、その分布状態もほぼ固定し、それが大筋としては幕末まで継承されたのである。まず、その全貌を遠江国について、『元禄高帳』によって表示すればつぎのとおりである。ただし、この史料には若干の誤写が認められるが、大勢の把握には影響はない。また、石高は便宜上、石未満を切り捨てた。この表から天領・旗本領・大名領が入り組んでいることが知られる。これは徳川政権の基本的地盤であった関東・東海地方の知行形態の特色であった。年代はすこしさかのぼるが、正保(しょうほ)元年(寛永二十一年、一六四四)の武蔵国ではおよそ大名領一七・天領五〇・寺社領二・旗本領三二の比率であったというから、表と比較すれば武州と遠州との差異も知られよう。【分布の地域差】遠州の中でも、それらの分布にはさらに地域差がある。【浜松地方の特色　旗本領　寺社領】天領は豊田・山名・周智三郡の山間部と榛原郡とに集中しているし、また敷智・長上両郡についてみると上表のようになり浜松地方は遠州の中では天領が少なく、旗本領と寺社領が多いといえよう。
　以下順をおって浜松地方の天領・旗本領・寺社領について述べる。
　
（表）元禄年間郡別共郷村表（『元禄高帳』）


（表）遠江国領主分布一覧表（元禄期）