財政難の克服

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 本章では主として享保期から文化文政期までを対象として取り扱うこととする。近世史におけるこの時期の位置づけもしくは性格については第一章でふれたように異論が多いのであるが、当時の幕藩政治の根本的課題は、財政難を克服するということであった。【農民 町人】その場合、幕藩体制の本来の基盤であった農業・農村・農民から年貢諸役を増徴することと新興の商業・都市・町人に対する支配統制を確保することとが施政上の二大目標とされた。しかも、この二つは現実には矛盾することが多く、その調和に領主たちは苦慮したのであり、ここに幕藩政改革成否のかぎがあった。ところで、浜松地方における当期のそうした施政の実態を伝える史料は乏しいので、本章では政治の背景とみられる社会経済の発展を主として考察することとした。