和地村牧田家

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 牧田家に遣る文書によると、同家は当時多くの水車を経営して粉ひきのほかに各地から菜種・綿実・胡麻・麻実を仕入れて油を絞り、これを近隣の村々や笠井市へ売り出し、また大豆・米・麦などを売買し、味噌・醤油の製造にも手をつけていた。つぎに当時の諸商品の流通状況を略地図で示し(二九八・二九九ぺージ参照)その特色を説明する。
 【三河地方】第一に菜種と油の取引を主とした三河地方との交通が盛んであったことで、その際豊川の舟運が活用されていることが注目される。
 【笠井地方】第二に三方原の林野を越えて笠井市とその周辺の村々との交流も密接であった。ことに笠井市に関係して綿実・大豆・小豆・胡麻などの農作物や種油・胡麻油・粉糟・油などの農産加工品の取引、さらには唐傘(からかさ)の仕入、また浜松の笠井屋や笠井市の保田屋(ほたや)などとも商取引が行なわれている。
 【取引商品 綿実 大豆 胡麻】第三に牧田家の取引に関係があった村々と取引品を地域別にみると(1)三方原南麓の砂洲地帯(舞坂・宇布見・若林村方面)の綿実・菜種(2)庄内の台地(大山・堀江・村櫛村方面)の綿実・大豆・麦・胡麻・味噌豆(3)引佐(いなさ)地方(気賀・金指方面)の大豆・胡麻・綿実(4)中郡(なかごうり)の綿実・胡麻・大豆・小豆(5)湖西地方の菜種・綿実・木の実などに大別される。これらの村々はそのかわりに牧田家から油を購入している。なお村櫛方面では油粕を多量に買い入れていること、笠井市では胡麻粕・油粕・粉糟などが盛んに売りさばかれていることは農村における金肥の普及を思わせる。
 
(表)庄内地方木綿・米・大麦・大豆価格(宮本七郎調査)
 米十両大麦十両木綿一両大豆十両
 
弘化420   
嘉永元19~34 7.8 
〃215~16 7.5 
〃311~1228  
〃416~18238.5 
〃51330  
〃6132512 
安政元18248.5~9.6 
〃21730  
〃3183312 
〃415287.3 
〃51124 8
〃612~16256.5 
万延元10~12153.23.8
文久元10113.7~6.33~5
〃29~13166.34.6~5
〃310194~54.5
元治元8173.1 
慶応元242.52.2~3.1
〃2341.2~2.52.4
〃3292.61.6
明治元372 


牧田家文書からみた幕末期西遠地方の商品流通圏図