海防私考を著す

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 一方藩主正春の遺命によって、若年の藩主正直の側用人兼旗奉行として家老につぐ重職にすすんでいた岡村黙之助は、弘化四年五月『海防私考』をあらわし、国防力を強化すべきことを強調した。これによると欧米諸国のアジアへの侵略を説明したあと、これら諸国の武力は最近百年来、きわめて強大となり、とくにここ三、四十年の進歩はめざましく、かつての百千倍にもなってくる。この事実を知らない人は、外国は卑しく、日本は神国なりと尊大にかまえて、坐ったままで勝つと思っているようである。そのうえ国家のために外国の状況を語る人があれば、かえってその人を嘲笑したりしている。昔と今と時世のちがうことをよく知って、がんこでわがままな議論をすてて、ひたすら敵艦を打ち破る方法を考えねばならない。【西洋兵制採用論】そのために鉄砲・大砲の製造、砲台の設置、軍艦の操練など、西洋兵制をいそいで採用しなくてはならないと力説している。