兵制改革と組織拡充

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 以上のように神主が弓隊訓練から、さらに洋式銃隊訓練にまでいたる過程は、井上藩の軍制近代化=西洋式銃砲武装化の進行を反映するものであり、外圧をうけた日本の危機の中で、兵制を武士階級より神主階級にまで拡大組織するにいたったことは注意される。この点神主にいたして藩側の要望もあったが、神主の側からもこれに積極的に応じる一面のあったことも注意を要するであろう。安政七年(万延元年、一八六〇)二月に有玉の神主たちは「違変出張御用節兵糧為手当」として、外国からの侵略に備えて米二俵を藩主に献納している。これが真に自発的になされたものかどうかはわからないが、井上藩と神主たちの素朴な民族意識をうかがうことはできると思う。