[岡村義理の建白]

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 安政元年(一八五四)より本格化した井上藩の仕法改革の最中、安政二年九月に書かれた岡村黙之助の建白書「御為筋申上げ覚書」によって、改革の意図と現実とどうであったか確かめておこう。つぎにその要旨を記す。
 【基本方針】厳格な節約と厳法をもって財政を豊かにし、兵備を整え人民を安撫せねばならぬと改革の基本的考え方を明らかにし、高禄無益者の禄を減じ、誠忠で器量ある者を重用すべきであるとした(家禄世襲の否定)。【風儀と節倹】家中同士の年始・五節句・寒暑吉凶見舞贈答等、一定年限内は父子兄弟のほか禁止すべきである。役筋の寄合等酒飯は厳禁。御家中囲碁・将棋・双六・詩歌・俳諧・茶道・煎茶・立花・生花・遊芸・音曲等改革年限内禁止。藩中上下男女農事に精励すること。筋骨健全となり不時の変に役立ち、生活も楽となり奢侈の悪風を除き、正直誠忠の風となるはずである。御家来のうち柔弱・力量なく手足白く武事の用に立ちがたい者には力役・遠足等を命ぜられたい。百姓町人をあざむき金銀を借り、あるいは不義理等ある場合急度処罰すべきである。御領分内に食料になる物は多く作り、食料にならぬ作物はへらすこと、建白書はすべて速やかに藩主に見せるよう重役中に命ぜられたい、と述べている。