意見を聴取

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 江戸でも上方での武力衝突と幕府方敗北の風聞は急速にひろまり、人々を不安につつんだ。旧幕府は国家の重大時に臨み、尽忠有志の者は貴賤にかかわらず、神田小川町開成所に出頭し意見を述べるようにとの触を廻した。【民主化】浜松藩政の場合にも農商から意見を求めたように、民衆の力が高まり、支配者側が動揺につつまれる時、思いきった自由化・民主化がはかられ、少なくともそうみせかけて民衆の支持を呼びかける動きが起こることは、注目すべき傾向である。民衆の側に政治的階級的自覚が高まり、彼らが団結し十分組織されておれば、このような時にこそ偉大な成果をあげることが可能となる。しかしながら当時武士階級の動揺と権力争いの間隙を衝いて、十分に政治力を発揮できるほどの力は、民衆の側に結集されていなかった。旧幕府側も倒幕派も民衆の力の結集されることをおそれ、極力民衆の力を分断するよう妨害と監視を強めた。