【慶応三年二月 勤王】正月二十九日、来浜した熊本藩士から受け取った出頭命令にこたえて、井上藩は年寄津川矢柄を桑名の征討軍本営に派遣して、二月五日「固ヨリ一同勤王為 皇国尽力仕候心底ニ御座候」と勤王を固く誓った(『東海道先鋒記壱』)。掛川・横須賀藩も井上藩と同様、それほど機敏な措置をとれなかったようである。鎮撫総督府も井上藩のにえきらぬ態度に焦燥を感じ、津川矢柄の参着をまたず発したものであろうか、それとも藩論を強力に統一すべく、津川矢柄に事情を問うたうえで、なお命令を発したものであろうか、同日参謀海江田・木梨両名より井上藩重役多川善右衛門・浅村勝司・伏谷又左衛門・三浦良五右衛門に宛て急速に桑名本陣に出頭すべきことを命じている。
浜松藩記録(国立国会図書館蔵)