甲州出動

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 井上藩の出動部隊の主力約四百名は、甲州の民兵隊である蒼竜隊の先導をえて、三月十九日先鋒総督府参謀海江田武次指揮のもとに、東海道先鋒副総督兼鎮撫使柳原前光を擁して沼津宿を出発した。井上藩はまったく交戦することなく、甲府に滞在することとなった。もっとも箱根路で攪乱行動をとった旧幕臣林昌之助らを討つため、五月二十五日甲府の井上藩兵百十一名が出動、二十八日箱根路の掃討にかかったが、すでに敵影を見ることなく、三十日箱根を引きあげて、甲府へ戻るという軍事行動もあった。五月ごろ江戸からも甲府へ藩兵の移動があったらしい。甲府に滞在した浜松藩兵は八月までに五百名を越す多数にのぼった(『浜松藩記録』)。そのうち兵士は二百五十二名、歩卒二百五十四名であった。これは六月二十六日に甲府の井上藩兵が人数の半分を帰国させるよう命ぜられ、兵士七十五名、歩卒百七十名が、七月四日浜松に帰着したことからも、首肯できるであろう。歩卒はほとんど荷役にあたる人夫で、武士身分とはいえないような人々であったらしい。