遠州の動向

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 戊辰の内乱に浜松の民衆が、どのように対処したのか、遠州報国隊の活動を除いては、めだった動きがないようである。
 内乱勃発の当初、新政府側の民衆への呼びかけは、民衆に世直しへの期待をいだかせ、大きな不安の中にも一種のほのかな明るさを持たせたが、これが全民衆的な基盤から組織的な力にまとめられることなく、一部の者たちだけが、倒幕派に結びつきえただけで、全民衆を一大変革のエネルギーとして積極的に組みこむ努力はなされなかった。
 むしろ武士階級はもとより一部村役人・豪農商などの村落支配者層が、広汎な民衆の力を当初は利用しながらも、基本的にはこれを分断、解消することに努め、倒幕派と提携して自らの利益を追求していったといえる。
 遠州の民衆の多くは政治情勢に対する十分に正しい判断と自覚をもてぬままに、ほぼ暗黙のうちに幕府側をみかぎり、倒幕派の活動に自らの運命を托したといってよいであろう。

遠州報国隊天竜川岸整列の図(浜松市城北 川上元雄氏蔵)