徳川家移封の脅威

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 故郷に帰った報国隊員は、事あれば銃をとって出兵することを、互いに約束し、多くは再び社殿に奉仕して、草深い田舎に埋もれようとしたのであるが、徳川氏が一大名として静岡に封じられ、駿河・遠江の旧領七十万石を領したため、報国・赤心両隊員には大きな脅威となった。隊員たちは江戸滞在中すでに国家的軍事上の見地と、あわせて自らの生命財産の防護のため、徳川氏移封反対の陳情をくり返した。反対運動の効なく隊員は諭されて、むしろ覚悟のうえの帰郷であった。実際旧幕府側のいやがらせもかなり発生したようである。【三方原旧幕臣】桑原真清の女(との)の話によれば、真清の留守中浜松三方原の百間長屋に移住した旧幕臣が、うしろ鉢巻・大小二本差しで、時々桑原家を訪れ脅迫したそうである。