寺請制度

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 このとき宗門改の方法として採用されたのが寺請(てらうけ)制で、これは戸ごとに宗旨を調査して、その檀那寺が誤りのない旨を保証する制度である。【寺請証文】元禄九年長上郡上善地村宗旨御改寺請判形帳(浜松市『松本文書』)によると、笠井村定明寺・同村法永寺・羽鳥村源長院の三寺が同村の檀那百二十二人(内男七十人、女五十二人)について「旦那ニ紛無御座候、若切支丹宗門并類族之由訴人御座候ハゝ拙僧共罷出可申分候」と身分を保証し、もし村民に出入があって異同を生じた場合は、その都度宗旨証文を提出させて正確を期する旨を庄屋たちが副判している。これが寺請で、この制度により婚姻・移住・奉公・旅行などをする場合にもそのたびに宗旨証文(寺請証文)を寺院から申し請けねばならないようになる。「貴寺御檀中其御村勘兵衛長女きよ儀弐拾五歳ニ罷成候処、今般拙中檀那油屋金三郎息金次郎女房ニ縁組候上者、向後拙寺檀中ニ加置、宗門印形等取計可申候、為後日宗門請一札依而如件」。これは嫁をもらった場合の宗旨証文の一例で、天保十三年五月浜松成子坂町法林寺の住持が堀江村満願寺の住持に宛てたものである。むろん満願寺からも法林寺へは嫁につかわしたという宗旨証文が送られているわけで、こうして今でいえば婚姻が成立したことになる。【宗門送り状】宗旨証文は宗門送り状ともいわれている。

宗門送り状