天竜川といえば、坂上田村麻呂にちなむ有玉伝説は浜松地方における伝説の代表的なもので、玉を投じたために天竜川が干上り陸地が出現したことを説いているのであるが、有玉(ありたま)村の八幡宮(当市有玉神社)がもとはその玉を斎く社であったと伝えているのも(『遠江国風土記伝』中道朔爾『遠江積志村民俗誌』)、やはり天竜川と庶民との密接な生活のつながりを示すものであろう。式内社の津毛利神社は天竜川の渡頭に、邑瀬神社は天竜川の砂洲にまつった神社で、その由来をたずねるといずれも天竜川の流路に縁のある神社であったという(内田旭「社寺の郷土史的説明」『郷友』第二号)。