竜麿の高弟小栗広伴は石原村(当市豊町)に生まれ、十三歳で入野村竹村尚規家に奉公して、その傍ら和歌・国学の教えをうけ、大平にも入門した。三十三歳で家に帰り、家業にはげみながら師竜麿の遺著の整理・手写につとめた。それには『校註古今六帖』『槇舎集』があり、その他『河蝦考』『児手柏』『宮古日記』(都日記初稿本)『出雲路のゆきかひ上』などがある。彼は歌才に秀で、多作家としては方朗とともに西遠地方の双璧である。遺稿集としては『栄樹園家集』があり、短歌七千六百首その他がおさめられている。
小栗広伴筆懐紙(浜松市鴨江 渥美静一氏蔵)