尚規家の分家二代竹村又蔵広蔭は、八木美穂・石川依平・久保長秋と交わりがあった。【変化抄】幕末のめまぐるしい世相の変化に逢い、国学を修めた広蔭は嘉永五年(一八五二)六月、『変化抄』二冊を書いている。この書はその序文に「おのれはやくよりしるしおけるを、ここかしこゑりいたし、をりをり人に尋ねもし、ききもして」とあるように、永年見聞したことがらを、百七十七項にわたって筆録したものである(『浜松市史史料編四』参照)。内容はいずれも浜松地方の農村の民俗土俗を知るよい資料である。【農家心の鞭】このほか随筆『農家心の鞭』があり、歌集『門田の八束穂(かどたのやつかほ)』がある。広蔭の歌風には八木美穂の流れを汲む万葉調もあるが、多く古今集の技巧をとり入れ、遠江地方の社寺・風物・物産を詠み、佐鳴湖八景・遠州七不思議の歌など、郷土色豊かな作品が多く見られる(高田岩男解説、竹村広蔭著『農家心の鞭』)。