また浜松の表具屋林蔵主催の「風流九家会」がある。天保十二年八月二十九日下池川の天林寺で開かれた会で、詩・文・書・画・和歌・連歌・俳諧・篆刻(てんこく)・挿花の九種に堪能な者がその作品を展示し観賞した。案内の刷り物には画家として
「 半香(ミツケ) 青城 金觜 顕斎(カワサキ) 芦渓 芦岸 石峰(ヨシタ) 応斎 衆魚 圭岳(ニシヲ) 芦翠 芦湖 玉渓(アリタマ) 鹿鳴館(中イヅミ) 煙坰(ハママツ) 秋実 芦津 思斎(ハママツ) 士道 雨亭 公孚 芦水」
の二十二名がある。青城は井通の熊谷氏、芦岸は中泉の山田氏、鹿鳴館は中泉の秋鹿氏である。このほか絵をよくした人に書家の部の思玄・松靄・緑介(鴨溪)、俳諧師の鉄支らがある。
なお書家の部には思玄のほか気賀の淡庵ら三十六名、俳諧師の部に岡崎の卓池・下大瀬の夷白ら三十九名、和学者(国学者)に高林方朗(みちあきら)・伊達方の石川依平ら二十二名そのほかがあり合計百五十名以上であった(鈴木耕平氏蔵『風流九家会記録』)。