【五年】浜松県(遠江国)の壬申地券交付作業は全国的にみて順調に実施された方で、明治五年十月(八月ともいう)から始まり、県から任命された「地券掛附属」(大郡二名、小郡一名)を中心に六年に集中的に行なわれ、七年二月までにその大部分を終了した。浜松地方の場合、例えば富塚村では五年十一月に地券竿入が始まり七年六月二十日までに地券証が下附され(『富塚村誌』)、村櫛村・堀江村の地券竿入は五年十一月十一日であった(『村櫛村誌』、堀江邑松助『年代宝蔵記』)。また実施内容については『市野村誌』に、各種地一筆ごとに地引絵図面を製し反別を明細に記載し地味水害(ちみすいがい)の有無等の事情により等級を定めこれに応ずる収穫反米を記し官が定めた石代を標準として地価をつけ県令大属の署名捺印した証券を下付して土地所有者を明らかにした、とある。ずいぶん迷惑した村もあったらしく堀江村松助の『年代宝蔵記』によると「明治八年又々十月頃より竿入調査に相成り村々迷惑仕り候」とある。