人民反対 条件承認

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 この提案に対し、人民は驚き、「石代ノ儀ハ天然ノ相場ニシテ高シト雖モ不可止、反米ハ実地検査ヲ経テ定ムルモノニシテ交換シテ増スヘキノ條理断然無之」、机上で作られた交換増米は「不正不当」であり、「権謀術数以テ無智ノ民ヲ欺カント」する措置であるとして強く反対し、不穏の形勢さえ呈するに至った。結局、県下の有力者であった岡田良一郎(天保十年佐野郡倉真(くらみ)村、現掛川市に生まれる、父は佐平治、大正四年没、七十七歳)・青山宙平(文政元年生、磐田郡中泉の人、磐田豊田山名郡長、明治四十三年没、五十三歳)両人の県令宛建言及び不服人民への説得により、これから四年間毎年収穫米を実施検査(収穫見様)を行ないその結果にもとづいて五年後(明治十三年)に修正して「公平」な反米、「真正ノ収穫」を定めること、またその見様(みだめし)方法については浜松県民会を開設して人民の協議をつくしてこれを行なうこと、という条件のもとに交換増米が漸く承認され、人民側の請書提出となり改租は実質的に終了した(五月)。県から改正事務局宛上申では問題となった田方の石代は五円五銭、反米は一石四斗六合六勺となっており、その他は人民の申告通りであった。ここで浜松地方の改正請調の一例を示しておく(次表参照)。
 
第一大区十六小区 佐浜村改正請調状況 (浜松市和地『中村家文書』)
宅地反別計8町5反9畝
反別反収米反別反収麦反金53円(等級ナシ)
町 反 畝 石 斗 升 町 反 畝 石 斗 升持山
一  等 3 6 8 1 7 0 1 1 9 2 3 5反別計43町6反8畝
 4 9 5 1 6 5 1 9 2 2 2 5内訳一等(反金75銭)38町9反2畝
 6 2 1 1 6 0 7 5 0 2 2 0二等(反金50銭)4町7反5畝
 5 9 4 1 5 110 2 3 2 1 5持林反別計4町6反2畝
 3 6 8  1 4 212 9 4 2 0 5反金50銭
   6 2 1 3 5 9 3 6 2 0 0反別計3町6反4畝
 3 4 6 1 2 5 7 6 2 1 7 5内訳一等(反金1円)3町3反9畝
 4 7 5 1 1 510 2 0 1 5 8二等(反金75銭)2反5畝
 3 9 1 1 0 6 6 1 8 1 3 5元田林成反別計2反5畝
 4 4 2   9 8 1 8 210 1 5内訳一等(反金75銭)1反3畝
十一 1 7 7   7 9 4 4 6   8 0二等(反金50銭)1反2畝
十二    7   6 0元林成反別計9反3畝
等外   3 1   3 9 1 4 2   4 5内訳一等(反金75銭)4畝
合計43 8 674 8 9二等(反金50銭)8反8畝
平均 1 3 6118 3 33芝地反別計2畝
収穫合計米593石3斗4升麦1,343石8斗4升6合反金75銭

備考 1 反別は畝未満切捨
   2 山林・籔等の等級は位置の便利と地味を基準とする。