交換米取消願 遠江国民会報告

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 遠江国民会は九月一日に再開され十日間にわたる審議を続けたが、重要議題は岡田議長提案の「収穫見様方法」であった。議長は可決されたこの方法に従って静岡県令宛に「改租収穫田方見様方法伺」を提出したが(九月十五日付)、県令はこれを認可しなかった。【遠州人民不満】このことは旧浜松県令との約束実行を期待していた遠州人民にとって大きな衝撃であり不満は高まった。十月末には臨時の遠江国民会が開かれ、収穫見様の実施が認められないからには交換米取消の出願をなすべきことが議決され、その実行を出願委員三名(岡田・青山・大塚義一郎)に委任した。「三士」とも自称した出願委員は異常の決意を以て県令宛に「交換米取消願書」を提出(十一月)し懇願をつくしたが、却下された。三士は改正事務局への「直願」を決心し、県にその添書を依頼したがこれも得られなかった。【遠州は継子】県庁は遠州人民をみること継子の如くでたのむに足らず、県令は継母の如し、県庁は遠民と駿民とを区別している、とはその際の委員の所感であった。つぎに遠江国民会の活動と経費に関する報告書を示す(上表参照)。こうして十二月には三士は上京し、改正事務局総裁(大久保利通内務卿兼任)宛に「田方収穫交換米取消願」を提出した。提出者の三士は「遠江国浜松宿外六百八十二ケ村惣代」の資格で連署している。これに対し事務局からは、遠江国は改租終了の際の特別事情があるので「特別ノ詮議」をする、刈様については静岡県庁へ願出よ、との指令があった(十年一月)。十年二月及び四月には臨時の遠江州会が開かれ対策が討議され、総裁宛に交換米取消願がくりかえし行なわれたが、結局認められなかったのである。
 
遠江国民会諸費計算表(自明治9.8.10開設至明治9.12)明治10.4.5遠江国民会議場
一金1700円地価1000円ニ付4銭6厘3毛4
戸数100戸ニ付28銭7厘3毛
人口100人ニ付6銭1厘3毛7
77円07銭3厘貢租哀願出岡旅費
1622. 92. 7諸費
内訳1211. 45. 0民会議長以下旅費滞在日当
244. 18. 9※書籍・活版料
 64. 90. 9 諸器械(大形掛時計・テイフル・椅子等)
57. 85. 0書記小使給料,大工作料
5. 37. 4筆墨紙費
2. 65. 4薪炭蝋灯油費
8. 15. 0人夫賃銭
11. 15. 6諸報知費(郵便税・電信報知・脚夫賃)
17. 19. 5諸雑費(議場借受謝儀,煎茶等)

備考 ※書籍買入代109円47銭
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 明清英仏米蘭の法律万国公法}99部607冊
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