ここで新政府の宗教政策をみよう。廃藩置県により政府の基礎が固まると、神道と仏教の両方面から教化運動に着手することに決し、同年神祇省(神祇官を格下げして成立)を設け宣教使をおいた。しかしこれを廃し、五年三月更に強化するため教部省を設け、教導職を置くことにした。全国の神官は教導職(役職に教正・講義・訓導の別があった)に任ぜられたが、僧侶が寺院の住職になるには教導職の資格(試補以上)を必要と規定された。そのために僧侶の教育機関として大教院(全国に一か所、増上寺)、中教院(府県に一か所)、小教院(全国すべての社寺)が設けられることとなった。しかし、実際には神道側の教導職の参加が多かったので、やがて神仏合同の教育機関と化してしまった。教育目標はいうまでもなく敬神愛国であった。新政府は、このように神官僧侶を再教育し、それを通じて国民の思想善導を目ざしたのであった。