【二十八年】明瞭な記録は、竹田寅吉によって創立された浜松電灯合資会社(資本金二万円)によって初めて点灯をみた明治二十八年からはじまるといってよい。竹田寅吉は富塚の谷(字牛ヶ池)に水力発電所を設け、浜松町会へも電灯柱建設願を二十六年提出したりしているが(『静岡県浜名郡浜松町沿革誌』)、そのときは富塚で十灯ほど点灯し得たばかりで浜松までの送電力はなかったようである(中村精『開発』)。ついで四・五馬力の蒸気機関によって運転する十六燭光三百灯用二千ボルトの交流発電機を採用し浜松電灯合資会社の発足となったのであるが(大正十五年『静岡電気事業概要』。駅前に火力発電所建設)、二十八年十月には浜松町内に四百八十灯がともったという。そののち同社は二十九年に電柱増設願を浜松町会に提出し許可をうけているが、三十四年に許可を取消されている。おそらく事業の不振からであろう。