【兀々会】兀々会は「当地の俳界徒らに俗輩の横行に委す、我等同人坐視するに忍びす」の趣旨で、明治三十二年四月に小野田坦々・亀井摯月などによって結成された。第一回句会は浜松城天守台に開催し、会員に清筠・杏村・鳴洋・孤舟などがあった。「小弱の嫌ひもあり」として芙蓉会と合併したようである。【稲妻会】万斛の稲妻会は、大龍寺に下宿していた渥味渓月らの主唱によって三十二年九月「当地方は十湖宗匠初め月並先生の巣窟とでも申すべき処」だから、これを「奪ふべく」との心組で、篁堂・柳涯・子秋・習堂などを会員として結成された。しかし、翌年の秋には「会員の集散常なく例会さへも催すこと」がむずかしくなり、渓月の和田小学校転勤(明治三十四年五月)のため解散となったらしい。【椎の実会】そののち渓月は和田村で浜松俳友会(明治三十五年)を、浜松紺屋の自宅では椎の実会を開催し、三十七年ごろまで続けている。
春水を隔てて赤き鳥居かな | 兀々会 | 坦々 |
春水の城をめぐりて月上る | 仝 | 摯月 |
貝島に負はれて渡る汐干かな | 椎実会 | 笑叟 |
夏帽や村に一人の文学士 | 仝 | 春川 |
虫干や小寺にあまる大般若 | 偕楽吟社 | 晨沢 |
君に別れ時雨るる頃となりにけり | 稲妻会 | 溪月 |
弾薬庫たち並びたる暑さかな | 蕉風会 | 暮村 |
蛇穴を出でめ茨の芽伸びにけり | 俳友会 | 溪月 |
鰌掘れば鶺鴒の来る裏田かな | 颯々会 | 六痴 |
一つ家に鉦も佗しき枯野かな | 仝 | 不老 |