その後、ようやく郷土への関心が高まり、浜松が『静岡県浜名郡浜松町沿革誌』を編纂したのは明治三十三年九月であった。菊判二百二十三ページの略装本で、緒言によると「材料の蒐集固より容易ならず、然るに必要の材料にして既に散逸せしもの尠からず、甚だしく事実の証左に窘しみ、遂に其要項を得ずして止みたるもの往々これあり、是編者の最も遺憾とする所なり」とある。沿革誌といっても、町制施行以後の町政方面の記録が大部分であるが、浜松町としての最初の沿革誌で、大正十五年発行『浜松市史』の基礎となった。
浜松町沿革誌