浜松市は市制の施行によって浜名郡より分離したが、その浜名郡は大正十五年六月末日をもって廃止となった。これは地方行政機関を簡約化することによって地方費を節約し住民の負担を軽減するとともに、町村の自治独立と健全な発達を促進するため、県下十三の郡役所の廃止と定まったためである。浜名郡役所は郡区改正によってはじめは長上敷知浜名郡役所と称し明治十二年三月開庁(同年三月下旬敷知長上浜名郡役所と改称、浜松高町)、二十二年町村制施行により三郡四町三十八か村を管轄し、二十九年郡分合廃置によって敷知(ふち)・長上(ながかみ)・浜名(はまな)の三郡を廃止し浜名郡を置くと浜名郡役所となり一郡三町四十一か村を管轄した。郡役所は開庁以来県と町村との中間自治機関として五十年間人々に親しまれてきたので、郡役所廃止は多くの人に惜しまれた。これより郡長も郡会もなくなり、郡は単に行政区制上の名称にしか過ぎなくなった。【地方事務所】なお県の地方事務をあずかる地方事務所が置かれるのは戦時中で、浜松地方では西遠地方事務所が元の郡役所跡に開所するのは昭和十七年七月であった。