県当局は選挙関係者に新法の解説や各戸に選挙の心得書二万部を配布しその趣旨の徹底につとめ、警察当局も県下より二百名の警官を動員して監視につとめた。九月三日は大雷雨の中に投票が終り、翌四日の六十年来にないという大暴風雨の中に開票を終った。有効投票一万三千八百五十九票(投票率八六%)、最高点天野千代丸(日楽社長、日楽争議が終ったのはこの年の八月)、無産系候補では鉄道従業員組合浜松支部から立った山口直弼(昭和十五年五月没)と浜松合同労働組合(大正十五年一月創立)が推した加藤七郎(浜松田町、昭和十九年八月没)が当選した。最高齢六十九歳、最年少二十九歳、平均年齢四十九歳。政党分野は新政会派十名(鈴木幸作・中村陸平・倉元要一・大野木代次郎など)、憲政会派九名(井上剛一・津倉亀作・岩崎豊など)、中正会派八名(高柳覚太郎・村松茂友・坂本辰平など)、中立派六名(天野千代丸・加藤七郎・山口直弼など)、田町組派三名(中村藤吉など)であった。【自治会】市政は政党を超越し市の健全な発達を目指すべきである、という有志議員の唱導によって新しく自治会が誕生するに及んで市会の分野は一変した。自治会に参加するものに津倉亀作・鈴木幸作・中村陸平・天野千代丸・倉元要一(鴨江町、衆議院議員、浜名郡長)などの有力議員をはじめ二十一名(政友会派一○名、憲政会四名、中立派四名、政友本党三名)に達し、自治会は市会における絶対多数党となった。第二党は中正会の十名、憲政会は五名で第三党となり、議長は鈴木幸作であった。
大正15年9月3日付普選の記事