また市勢の発展によって手狭となった浜松警察署の拡張問題が起きたのも大正の末期であった。しかし拡張よりむしろ新築ということで、元浜名郡役所跡に転用と定めた県当局が、浜松市会と浜名郡町村長会へ協力の依頼をしたのは大正十五年十一月であった。これに対し浜松市会と町村長会は、現在浜名郡役所跡の建物は各種の実業団体や教育団体が使用中であるとし、これの移転や破壊は反対としたので、翌昭和二年県当局は「別の地へ新築することに定める代りに、市はその建築資金の一部として五万円を寄付する」という代案を提示してきた。市としては不満もあったが内務省内示もあって①警察署は鴨江町(須佐之男神社跡)へ移転する。②その代りに市がその土地全部と建築費の一部五万円を寄付する。③現在の警察署建物並に敷地は市が無償でゆずり受けてこれを市立商品陳列館とする、ということで和解し、三年の十月十日移転が成った(『浜松警察の百年』)。なお特別高等警察係(略称は特高課、大正三年設置の高等係を強化したもの)が置かれるのもこの年であった。渡辺市政時代は過ぎ、中村陸平市政の時代であった。