ついで昭和六年になると工業組合法(昭和六年公布)による組織の再編運動も活発化してくる。そして販売業者・織布業者・染色業者の三者を包含する遠江織物同業組合もかつては販売業者主導型の組合であったが、撚糸・整経・整理・糊付等の業者の意向も尊重しなくてはならなくなってきた。さきの永久社と天龍社の設立もそうした一環の動きにつらなるものであったが、工業組合法の公布はさらにこの動きを押し進め、昭和七年から八年にかけて左のような五組合が誕生し、遠江織物同業組合は同八年十二月の遠江南部織物工業組合の発足を最後に終ることとなった。
①遠江染色工業組合開進社 昭和七年五月に浜松市と浜名郡の染色業者によって設立。共同設備による原糸染色漂白の合理化をはかり製品の検査統制を行なった。事務所浜松市佐藤町。創立当時の組合員数百二十六名、理事長斎藤徳次郎。
②遠州織物商業組合 昭和七年十二月に商業組合法(十月施行)により販売の合理化をはかって設立された全国初めての商業組合。事務所浜松市板屋町。創立当時の組合員数六十七名、理事長伊藤謙次郎。
③遠州捺染整理工業組合盛興社 昭和八年三月に浜松市・浜名郡・磐田郡等の捺染加工業者及び整理業者によって設立された。三部門(銅版加工・手加工・整理)に分れ運営され、同業者の権益確保につとめた。事務所浜松市馬込町。創立当時の組合員数八十一名、理事長山田倉太郎。
④遠州織物工業組合北盛社 昭和八年四月に浜名郡北部の笠井町をはじめとする各村、引佐郡等の小巾業者によって設立。浜松工業試験場北部分場はこの組合の全面的協力によって十一年十一月発足している。事務所浜名郡小野口村小松(現在の浜北市)。
⑤遠江南部織物工業組合 昭和八年十二月に浜松市内と浜名郡南部の小巾業者とにより、小巾業者の不況打開をめざして設立。事務所浜松市板屋町。創立当時の組合員数四百四十九名、理事長竹山彳。
以上の他にも同種業務に携わるものとしての任意組合・私設団体があった。