農業厭忌の傾向 地価上昇 集約的農業 販路拡張

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 「近時商工業の発達に伴ひ、農業者は漸次其の数を減じ、商工の副業に従事するもの多く、少壮者に在りては耒耜を把て田畝に労働するを厭忌するの傾向は年一年に馴致せられ、往々妻子を携へ市街地に別居して商工業に従事し、老年者のみ家を守りて纔に家事を継続するに過ぎざるものあり。本市は近年商工業の異数なる発展に因り、工場増設、商店増加の為(中略)之に対する敷地は市街接続地若くは高燥開豁の地区に向って着目せられ、随て一般に地価昂騰し、其作付収穫の如きは寧ろ之を重要視せず(中略)然れども、熱心なる農業者に在りては市街発展に伴ひ最も有利なる経営法を講究し、必ずしも広き土地を要せざる蔬菜栽培等に依り極めて集約的に経営し、市民に一日も欠くべからざる新鮮なる蔬菜の供給をなし、多大の利潤を得るに至り(中略)、終に浜松市内にては消費し盡す能はず(中略)遠く東西市場へ販路を求めざるべからざるの盛況を現出せり。近来は尚進んで高等園芸栽培就中花卉栽培の如き温室栽培の如き益々増加せんとするの傾向ある(以下略)」