嘆願書提出

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 大正十五年(昭和元年)四月二十一日、日本楽器従業員(総数一三八〇名、うち女子三〇〇名、争議に参加した従業員一二七二名、当時従業員の大部分が浜松合同労組に加入していた)は次のような十二項目の「嘆願書」を会社側に提出、二十五日迄に回答を求めた。会社側はこれを拒否し八月八日までの百五日間の長きにわたる労働争議がはじまった。
 
【要旨】第一条 衛生設備完成御実施相成度候(以下要旨)、便所・洗面所の増設、ウエスを再消毒、食堂の設置、昼食休みを四十分にすること(従来は三〇分)。第二条 相扶会の会計監査役を各部平職工中より一名宛選出相成度、会計袋に人工を明細に記入相成度候。第三条 正月の休日十日間を七日間と改正御実施相成度候。但し十二月三十日より一月五日まで。第四条 決算期の休日及び会社の都合にて中途退場の場合は、日給一人を支給相成度候。第五条 兵事関係によって休んだ場合は、日給の半額を支給相成度候。第六条 来期より皆勤賞与を廃し、年功賞与を御実施相成度候。第七条 退職手当は六ケ月未満三十日分、一ケ年未満四十五日分以上、一ケ月を増す毎に一日分を加算相成度候。但し三ケ月未満は支給せず。第八条 最低賃金を左記の如く御実施相成度候。男十五歳以上七十銭、男壮丁以上一円六十銭、女十四歳以上六十銭、女二十歳以上一円十銭。第九条 一ケ年二回、必ず昇給御実施相成度候。第十条 公傷にて入院中もしくは作業不可能の場合は、日給一人を支給相成度候。第十一条 残業の場合は相当の歩増を支給相成度候。第十二条 年二回の慰安会を開催せられ度候。
 右の条項に対し、貴会社事業不振の折柄、御困難のこととは候へ共、私達の実生活状態を充分御調査被下、来る二十五日午前九時迄に職工代表並に組合代表と会見の上、御回答相成度候
   日本楽器株式会社々長 天野千代丸殿       日本楽器株式会社職工代表者

日本楽器製造株式会社販売部(大正8年撮影)