四月三十日 争議真相発表会がライオン館において午後七時より開催され、警官数十名の物々しい警戒のなかを聴衆は定刻前から会場に押寄せた。鈴木織機争議で治安警察法に触れた安島高行が滑稽交りで出演弁士を紹介し、満場に愛嬌を振りまいた。評議会の田中虎之助は、会社に対する十二ケ条の嘆願書を読み上げ、むしろ当然過ぎる程の要求であると述べた。【評議会指揮】また争議団総指揮者の評議会中央委員松葉清継は、今回の争議勃発は自分が煽動者であるかのような口ぶりを会社側では漏しているが、一千三百余の職工達が煽動に依ってストライキを決行する訳がない。既に来るべき時が来て居たのである。しかし官憲はこのライオン館の定員は八百人であるのに七百五十人しか聴衆を入れない。警察は何が故に歌舞伎座・浜松座等の芝居の満員を厳重に取締らないのかと警察攻撃をおこない拍手を浴びて降壇した。その他評議会の鍋山貞親・同争議部長本沢兼次郎・同中央委員三田村敏治(四郎)らがこもごも立って、熱弁を振るい、盛会裡に午後十一時二十分頃散会した(五月二日付)。なお、当時争議団が開催した各種の演説会には、高い入場料(五銭)を払ってまでも、かなり多数の聴衆が集まったという。