官憲の弾圧

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 五月十六日 日本楽器争議は昨今又復悪化の形勢を示し、何時流血の惨を惹起せんとも測り難いので、浜松署では厳重警戒に努めていた処、午前十時頃に楽器争議団応援の鈴木織機株式会社職工金田義雄外二十余名は、日本楽器会社付近で示威運動を行ない、警官の制止に従わなかったので、遂に金田外一名は検束された。【評議会赤衛団】また、午後二時頃争議応援のため来浜した神戸評議会赤衛団太田喜八(仮名)外十余名が、楽器会社正門付近で示威運動を行なったので、警戒中の警官十数名が之を阻止せんとして大乱斗の末に検束された。これがため同署は検束者で満員の大雑踏を呈しているとのことである。
 
【労農同志会 天野辰夫】会社は日本楽器争議団に対抗すべく新たに日本主義労農同志会(天野辰夫によって結成、天野辰夫は天野社長の長男、国体主義者、上杉慎吉の門下)を結成し争議経過を注視していたが、この日午後一時ころよりライオン館に於て演説会を開催した。浜松署では郡部方面からも警官の非常召集を行なって、会場の内外を六十余名の警官で以て警戒に努めたが、聴衆は約六百名で、牧野孫太郎の「日本主義の弁」、森田秋峰の「争議の真相」、ロシア人カチェールコクの「共産ロシアの真相」などが雄弁を振ったが、聴衆は反駁(ばく)もなさず一つの弥次さえ飛ばなかった(五月十七日付)。