浜松市の市営自動車論は、すでに昭和三年鈴木幸作市会議長らによって論議されていたが、七年中村陸平市長時代に入るとようやく機運が熟し、市営乗合自動車事業(伊場・船越線、師範学校・天神町線、中沢・向宿線、高射砲隊・浅田線の四路線、一区五銭とする案)として出願したが許可にならなかった。ついで九年の再申請となったが、これも許可にならなかった。すでに浜松循環自動車株式会社があり市内の交通網はほぼ整備されていたためであった。【二社路線買収 十銭均一】このため市は十一年に至り従来の計画を廃し、既設の浜松循環自動車株式会社と中田島自動車株式会社を買収し、この両者のもつ路線を継承して市営自動車事業を行なうことと決定し諸手続も完了、同年八月一日より浜松市営乗合自動車(旭町一番地)として新車八輌を購入し十八輌をもって運行、料金十銭均一で営業を開始した。市営バスの誕生であった。
そののち十四年十二月には上池川に車庫を新設、十五年四月には自動車係より自動車課へ昇格、早出・伊場線などの新設免許を申請したが戦争のため不可能となり、西廻線も運行回数を減少、佐鳴湖線は十六年より運行休止となった。
(表)浜松市営乗合自動車運行状況
路線名 | 経由地 | 距離 | 回数 |
| | km | 1日 |
西廻線 | 浜松駅 鴨江 広沢 名残 追分 下池川 野口 浜松駅 (相互循環) | 7.9 | 158 |
東廻線 | 浜松駅 龍禅寺 北寺島 向宿 天神町 佐藤 野口 浜松駅 (相互循環) | 6.9 | 43 |
北廻線 | 浜松駅 千歳 平田 伝馬 元城 山下 高林 助信 野口 浜松駅 (相互循環) | 6.5 | 38 |
中田島線 | 浜松駅 中田島(夏季6か月季節運転) | 4.9 | 5 |
佐鳴湖線 | 浜松駅 中山町 高町 広沢 小薮(夏季3か月季節運転) | 4.9 | 4 |