市立浜松図書館は、この私立浜松図書館の蔵書千冊を市が譲り受けこれを基礎とし、大正天皇御即位記念事業の一として大正五年以来募ってきた市内篤志者の寄付金に市費を加え、浜松市紺屋九七番地に新築が成った。敷地三百四十一坪で七十二坪の平屋建物であった。開館当時の蔵書数四千七百三十五冊で、年始年末の休暇や祝日を除いて年間を通じ午後九時まで開館し閲覧者の便をはかった(『浜松市立図書館小史』)。閲覧人員は十年二万五千八百六十四人(男八三%)、十三年四万八千三百二十七人(男八八%)、昭和五年六万三千百一人(男八三%)、十六年には七万二千四百九人と増加した。その間には賀茂真淵をはじめ遠州国学者の遺墨展を開いたりして文化方面にも活躍したが、二十年六月十八日の空襲で疎開寸前の蔵書三万五千冊、その他郷土資料を失った。初代館長心得は元海軍将校石井忠晴(浜松市松城)であった。
なお昭和十六年には、曳馬(曳馬国民学校内)・富塚(富塚国民学校内)・白脇(白脇国民学校内)・蒲(蒲国民学校内)の四図書館があった。いずれも旧村立の図書館であったのを新市域に合併のさい、市立として受けついだものであった。
浜松市立図書館(紺屋町所在当時)
浜松市公会堂(利町)