上映映画は短編実写映画(一本)、劇映画として邦画(旧劇と新派劇、一本又は二本)と洋画(一本)というのが原則的で一週間で映画は交代、一日一回の夜間興行が普通で、興行時間も六時より十一時と長時間であった。【弁士 楽士】無声映画のため洋画は一人の弁士(五十嵐狂虎・吉田天洋などが人気があった)が、邦画は数名の弁士が掛合台詞鳴物入りで説明し、楽士が数名(ピアノ・オルガン・コルネット・バスなど)おり音楽の伴奏をし興趣を添えた(例えば大正十五年六月松竹館上映映画をみると新派「母よ恋し」、旧劇「女坂崎」、洋画「絶海の冒険」、実写「航空ページェント」であった)。
観覧席は階上は畳席で階下の平土間には長椅子を並べ、席は男子・女子・同伴席とに別れ風紀の取締りが厳しく、警官席のあるのが普通であった。入場料は十五銭前後が普通であった。