映画の普及

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 最初は古い映画が上映されたが映画館の数が多くなると、日本映画はもちろん新作品も早く見られるようになった。大勝館の尾上松之助映画に鬱憤を晴らし、敷島館の山本嘉一演ずる乃木将軍に忠烈の血をたぎらせ、吾妻座のルス・ローランド主演の連続活劇に胸をおどらせ、来週の上映を待ちこがれた。また勝閧亭(寄席であったが映画館に変った)のユニバーサル社のブルーバード映画に夢をふくらませた。正月や盆はもちろん土曜日などは立錐の余地もなく、織物の町らしく女工の脂粉の香でむせかえるようであった。【プログラム】映画館ではプログラムを発行するようになり、映画俳優のブロマイドを売る店(連尺町)もできたり、映画熱に浮かされた青年たちの中には騰写版の映画誌をつくるものも現われた。