文芸誌

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 暗い戦争の谿間にあったのが、昭和初期であった。このころ花井陽三郎(当市池町)の小説『巨火』(昭和五年版)が刊行されている。【涛声】また文芸誌では昭和六年に伊達鎮二などによる『文化の隅』(『不屈のあゆみ』)、七年には『涛声』(浜名郡弁天島斎藤愛子方涛声社)が発刊され浜松から渥美暁夢(静一、当市鴨江町)や谷ゆりか(小池鈴江、当市成子町)などが寄稿している。【東海文学】十年ごろには鈴木清一・芝田子雄・鈴木勇・須部巳代治など浜松を中心とする文学愛好グループによって創刊された『東海文学』(東海文学社)があった。【牧水】十二年一月には特別号を発刊しているが、この中で気賀の吉野江水は『牧水の思い出』として、牧水が昭和九年六月二十一日沼津を出て鷲津駅で下車し、巡航船で舘山寺を経て気賀の江水をたずね都田川を散歩し夜は酒を二本飲み、翌二十二日は奥山半僧坊に参詣して陳座峠を越え新城から湯谷へ出たことをのべている。また鈴木清一は、十一年四月の静岡県会議員選挙に大野篁二が立候補し、長谷川保がその事務長となったのが原因で、当地方の日本共産党と社会党が分裂する遠因となったと述べている。
 
【つるばみ】『つるばみ』が「浜松から生れる文学雑誌」ということで発刊(連尺積石堂発刊)となったのは昭和十一年で、菅沼五十一(当市向宿町)が編集にあたり、無名作家の発表機関誌として誌面を開放している。【妄言】また「遠州青年諸君の為に正しい大衆的文化機関に育てあげたい」(編集後記)とする『妄言』があった。同年八月の第四巻第三号をみると編集兼発行人は殿岡克之(当市伝馬町)、発行所は仝所遠州青年クラブとなっている。【涛声】なおこのほかに中村精・増田育仙(当市砂山町新豊院)・永井治雄などによる『涛声』があった。【モダン浜松】また昭和十年綜合雑誌に『モダン浜松』(編集発行人当市鴨江町久米弘国)があり、小説を名倉史進・原田信夫・鈴木亥太郎、詩を鈴木白露、俳句を大城国夫などが寄せている。