羽仁春(浜松商業学校教員)には詩集『山岳の韻律』(昭和九年四月、羽仁春太郎先生遺稿刊行会)がある。各地を転々として落ちつかなかった詩人肌の羽仁春が浜松で生活の小康を得「その体験と知識とを整理して書きあげたのが長詩『山岳の韻律』」(中村精跋文による)で詩集には『山岳と韻律』の全編十編のうちの七編が集められている。野口米次郎と佐藤惣之助が序文をよせているが、前者はこの書は「所謂批評なるものを超越した人生の記録」であるとし、また後者は「私はかゝる作品に詩的価値云々よりも人間として、生活として大に啓発されるところがある」といっている。