街の劇場

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 昭和八年になると「梨の葉会」から分離した人たちによって「街の劇場」が創立された。【朗読会】会員は勝見暁(渥美静一)・松本長十郎・平田菁児・南條文雄など十余名で、第一回朗読公演は同年六月、続いて九年四月までに七回の公演をした。第二回(七月)の公演会のプログラム(発行紺屋町宝林堂)をみると上演戯曲岸田国士作「迷子になった上等兵」・額田六福作「真如」・久保田万太郎作「雨空」・中村吉蔵作「予言者日蓮」で、第三回(十月)「父帰る」「首の繩」「小栗栖の長兵衛」「秋の夜」となっている。金井屋呉服店楼上(土曜日、午後七時)が会場であった。金井屋の二階は畳三十畳ほどの広間があり、当時としては恰好の集会場で、公演のたびに満員の盛況であったという。また演劇誌『街の劇場』が、同名の戯曲朗読会の機関誌として八年十二月に発刊されている。同人として前記の会員のほか透徹一(木全大孝、当市成子町大厳寺)・杉浦路枝(圭一)・竹月冬・吉野嘉恭などが名をつらねている。「梨の葉会」といい「街の劇場」といい有意義な演劇運動であったが、時局が苛烈となると衰えていった。