[笠井町・中ノ町村・和田村各警察署の設置と廃止]

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【笠井町警察署 中ノ町村警察署 和田村警察署 自治体警察の問題】
 新制度の導入により自治体警察として浜松市警察署以外に笠井町・中ノ町村・和田村の三町村に三つの警察署が設置された。三署の配置定員は表2-8の通りであった。静岡県全体では、九市四十二町十村に設置された。
 自治体警察の最も重要な問題は財政問題であった。経費はその自治体で賄うことになっていたので、従来一、二人の駐在所巡査が勤務していた町村も、公安委員や数人の警察吏員を配置する必要に迫られたため、財政の貧弱な町村では大きな負担となった。その点は、連合国軍の静岡軍政部『月例報告書』(『静岡県史』資料編21)に、「小規模な町村は財政的に自治体警察を維持することができない…こうした町村においてはほとんど犯罪が発生していない…、法律を改正して人口二万人以上の町村だけに自治体警察をもたせれば、警察制度全体はより効率的になり、こうした町村住民の重税も多少緩和される…」(昭和二十三年十二月)と記され、連合国軍自身も認めている。また、同報告書は別の点も指摘している。「こうした町では警察の無気力が顕著である。これは昇進の可能性が欠如している」(昭和二十四年五月)。そして、この点も自治体警察設置前の昭和二十二年十二月の報告書でも、警察官に自治体・国警のいずれかを選択させる調査について、警察官の七割は国警に留まることを希望し、その方がより多くの利益が得られることを報告している。
 新制度が実施されると間もなく警察単位の細分化による警察力の弱体化に合わせて、小規模な自治体警察においては、財政難、人事交流の行き詰まり、さらには一部有力者による警察支配等、憂慮すべき問題が生じた(『静岡県警察史』下巻 六四八頁)。そこで昭和二十六年六月警察法の一部改正が行われ、人口五千人以上の市街的町村は従前の自治体警察を維持するか廃止するかを住民投票で決定できるとした。この時、県下で四十一町八村(市制・町制により数が発足時から三つ減)に警察署が設置されていたが、三十六町村で同年八月から九月にかけて住民投票が行われ、すべての町村で自治体警察の廃止が決定され、その地域は国家地方警察に編入された。三つの町村(笠井町・中ノ町村・和田村)の自治体警察はこの時点では存続したが、日本全体でも多くの町村が廃止の方向に向かったので、昭和二十七年六月一日、浜名郡で残っていた舞阪町警察署と鷲津町警察署と共に、三町村の自治体警察署は廃止となった。この三町村は国家地方警察東浜名地区警察署の管轄に入ることになった。
 
表2-8 自治体警察三署の配置定員(昭和23年2月4日)
警察別\区分警部補巡査部長巡査
笠井町警察署1269
中ノ町村警察署1247
和田村警察署1247
出典:『静岡県警察史』下巻より作成