【浜松市消防署 石津谷茂 火災予防】
自治体消防制度の根幹となる常設の消防本部(消防署)について述べることにする。浜松市の常設消防の歴史は古く、大正十四年(一九二五)に浜松市消防組常設部を設けた。これが戦時中は警防団常設部を経て、戦後は浜松市消防団常設部となった。そして、昭和二十三年十月一日に浜松市消防本部設置条例が制定され、新しく浜松市消防署が誕生した。これによりこれまで常設部にいた者は市の消防職員として採用された。翌年九月一日には石津谷茂が初代消防長に就任した。石津谷は国家地方警察の周智地区警察署長(戦前は浜松署警備主任)で、消防に明るい人物であった。そして、十月一日には消防長の下に浜松市消防本部が設置され、総務係・予防係と浜松市消防署が正式に誕生した。浜松市消防署の庁舎は戦前の常設部があった鴫江町に置かれたが、これは浜松市警察署の西隣であった。消防署員は三十七名、消防ポンプ自動車二台を配備し、浜松市域全般を管轄した。消防本部の予防係は火災予防上の立入検査や危険物の取り締まり、建築物の認可などを担当したが、これは消防団にはなかった権限であった。戦後の自治体消防は単なる消火にとどまらず、火災予防に大きなウエイトを置いたことが注目される。昭和二十五年に制定された浜松市消防本部処務規則によると、消防署員は二班に分かれ、交代制勤務となっており、勤務時間は午前九時より翌日の午前九時までであった。
浜松市消防署は昭和二十五年七月六日に寺島町に南部派出所を設置し、職員十五名、ポンプ自動車一台を配備した。また、同年十月一日には相生町に東部派出所を設置し、職員十六名、ポンプ自動車一台を配備、防火体制の万全を期した。これらのために、同年二月には消防士を新規募集することにした。採用条件は二十歳以上三十歳未満、中学校卒業程度の学力を有する者で、学科試験や身体検査などの選考を経て二十名が採用された。