【教職員の適格審査　修身・日本歴史・地理の授業停止】
　連合国軍最高司令官マッカーサーは昭和二十年十月十一日に婦人解放・学校教育の民主化など五大改革を首相に口頭で要求した。これに基づきGHQ（連合国軍最高司令官総司令部）は日本の教育について様々な指令を発することになった。その第一は昭和二十年十月二十二日に出された日本教育制度に対する管理政策である。これは軍国主義的・超国家主義的教育の禁止と国際平和、基本的人権思想の教育を実践することを求めたものである。続いて十月三十日には、教育関係の軍国主義者・超国家主義者の追放と、そのための調査機関設置などを指令した。この指令の結果、「教員適格審査の結果」や「教職適格確認書」（『新編史料編五』　三教育　史料13・18）に見られるように教員の適格審査が行われた。
　静岡県における教職員の適格審査は昭和二十一年六月から実施され、翌年五月にその結果が発表された。それによると教職員一万五千余人のうち不適格者は二百名に上った。この審査は、その後に採用された教員も対象となったので、昭和二十六年ごろまで続いた。第三の指令は昭和二十年十二月十五日の、国家神道、神社神道ニ対スル政府ノ保証、支援、保全、監督並ニ弘布ノ廃止ニ関スル件である。この指令は国家政策全般にかかわるものであったが、学校においても終戦までは毎月八日の大詔奉戴日などに教師が生徒を引率して神社に参拝するなど、神道に関する多くの行為をしていたのである。四つの指令の最後は、十二月三十一日に発せられた修身・日本歴史及び地理の授業停止と、教科書回収に関するものである。修身・日本歴史及び地理の授業停止は、十二月十五日の神道指令と対応するもので、これらの授業は児童・生徒に軍国主義的・超国家主義的な観念を植え込むために行われたとGHQは断じたのである。これを受けて西遠地方事務所は、昭和二十一年一月十九日付で授業停止と三科目の教科書の回収、一括保管を通知、三教科の時間は社会・経済・政治に回すことやほかの教科に配当することを求めた。二月になると、新教育方針や度重なるGHQの指令が遵守されているか、隣接の学校を六月十九日までに相互視察してその視察報告書を提出することを求めた。GHQの指令は昭和二十一年以降大変な数に及んだが、その一例を表2-11にまとめてみた。年月日は西遠地方事務所長が学校に文書を発送した日付である。

図2－9　教職適格確認書