[天皇陛下の北国民学校への行幸]

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【北国民学校】
 昭和二十一年一月一日の昭和天皇により発せられた、天皇の神格化を否定する内容の詔書(いわゆる天皇の人間宣言)が学校教育に与えた影響は大変大きかった。人間宣言を発せられた後の二月以降、天皇は各地に行幸された。静岡県には六月十七日、十八日の両日にわたって行幸、浜松には十八日に訪問された。戦災や復興の状況を視察されて、市民を激励されたが、特に戦災で校舎が全焼したため東陽興業の工場(これも戦災で傷みがひどかった)を仮校舎として授業を行っていた北国民学校を視察された。天皇は当日午前九時四十五分に到着され、校長による教育の実際についての奏上に対し、「教育をするのに困難な時ではあるが充分に努力をせよ」とのお言葉を賜わっている。その後、板敷きの上に敷かれた茣蓙(ござ)に座って学ぶ児童らの様子を御覧になり、「うすべりの上にすわってゐてしびれはされませんか。」との御下問に対して、校長は「時々起立させて防いで居ります」と奉答している。戦前の行幸では、いろいろな奏上に対しても終始無言で、ただ首肯するのみであったが、今回は子どもたちにも言葉を掛けられて励ますなど、人間天皇を身近に感じて感激する市民も多かった(『新編史料編五』三教育 史料10「天皇陛下をお迎えして」参照)。なお、この行幸時の様子は『静岡県下御巡幸に関する記録概要』に詳述されている。