[教育界における神道色払拭]

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 軍国主義・国家主義教育を担った教育界に対して神道指令は徹底していた。「国家神道は神社よりもむしろ学校で広められた」(平成二十年二月十一日付『朝日新聞』、島薗進執筆「国家神道」)からである。
 その実施要項は、昭和二十一年一月十九日付で西遠地方事務所長が市町村長と学校長にあてた十一条と五項目にわたる通達によって知られる(中ノ町村役場文書「社寺関係綴」)。その内容を摘記して掲げる。
 第一条には、学校内での神道教義の弘布の絶対的禁止をいい、第二条では学校内での神道の祭式・儀式・慣例等の挙行や後援を禁止している。この第二条には五項目の細則が付いている。
 その細則の第一では、伊勢神宮・明治神宮等に対する遙拝は禁止。ただし、宮城遙拝は禁止していない。第二では、氏神等への団体参拝は禁止。第三では、氏神祭日での休業は廃止。第四では、国祭日の取扱は内閣で考究中であること。第五では、神宮大麻の頒布や神饌米奉献等の行事は禁止、とある。
 第三条には学校内の神社と関連施設や祭具の撤去を指示。御真影奉安殿・英霊室・郷土室等の神道的象徴の除去を指示。第四条には、学則・校則・校訓・綱領から神道的字句の除去を指示。第五条には官公立学校の教職員による神道の支援・保全・弘布・講義の禁止。第六条には官公立学校の教職員による神社への奉告や儀式参加の禁止。第七条には、「神道其他如何ナル宗教ヲ問ハズ之ヲ信仰セザルガ故」の宗教上の儀式等への不参加を理由とした差別待遇の禁止。第八条には、神道の神職養成のための私立学校存続は許可。ただし、経費助成は不可。第九条には、教科書中の「神道教義ニ関スル個所」を削除指示。第十条には、「国体の本義」「臣民の道」や類似の「官発行ノ書類論評等」の頒布禁止。第十一条には、「大東亜戦争」「八紘一宇」等の「用語ニ依ル教授」は禁止、というものである。
 この原理が後に日本国憲法において言及される信教の自由であり、大日本帝国憲法下で国家神道を前提とする、いわゆる信教の自由とは峻別されている。