[地域社会と神社再建]

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【宗教法人令 宗教法人法 神社本庁 静岡県神社庁 岡部嚴夫】
 戦前の国家神道下では、神社は国家的支援、地域行政機関の保護監督を受け、神職は官吏としての給与を受けていた。祭事に当たっては地域住民を氏子として各戸に割り当てた奉納金を恒例的に受領し、神社が授与する大麻・御符・御神札などの代金、崇敬者からの寄付や賽銭などを受納していた。
 他方、GHQの勧告によって徹底的な農地改革(第二次改革、昭和二十一年~二十七年)が断行されて、大地主としての神社もその対象となった。政府による神社・神道への支援・監督を禁じた神道指令により、神職は官吏ではなくなったので、神事・祭祀を執行する上での神社の経済力は縮小した。
 自立への方途は神道指令下での、次いで日本国憲法下での、地域住民を氏子とする合法的な再編成、それが第一に考えられたことである。第二に境内地を有効に活用する多角経営化である。これらの企画運営に関する法的根拠が、宗教法人令(昭和二十年十二月二十八日施行)であり、次いで、宗教法人令の廃止後の宗教法人法(昭和二十六年四月三日施行)である。明治初年以来神社境内地は国有地であったが、昭和二十二年四月十二日、社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律が公布されたことは神社財政の上から意義は大きい。
 宗教法人の統轄機関として昭和二十一年二月三日神社本庁を設立し、その三月十五日には静岡県神社庁が発足した。神社をめぐる変革(神社庁設立、宗教法人、国有境内地無償譲与、農地改革)の実務を担当した岡部嚴夫の「稽古照今」(『静岡県神社庁四十年誌』所収、平成元年刊)は貴重な記録である。