戦後の再開と問題点

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【道徳科学研究所】
 敗戦後のモラロジー運動で対外活動の第一の問題点はGHQ指令の遵守である。『道徳科学研究所紀要』第壱号(昭和二十二年五月刊)の巻頭言の中で、元旦の決意四カ条の一つとして、ポツダム宣言を実行し「マッカーサー元帥に御安心を願ひ」、国際的信頼を回復せんことを掲げている。団体理念の表現としては天皇および学祖への敬仰精神を神道形式により表現してきたので、神道指令に整合させねばならない。式典礼拝は二柏手一礼、御真影と故学祖の額には一礼と決め、「日本に於ける道義と云ふ言葉」が軍国主義または国家主義、神道主義の標榜と解釈されることを懸念した(『紀要』第壱号)。つまり、敗戦直後の団体運営の理念が神道指令に抵触する可能性からの回避である。ちなみに昭和二十二年二月、同研究所の地元、千葉県での神道指令違反の摘発事例を全国的に知らしめ、「趣旨徹底」を通達した事件があった(『新編史料編五』 四宗教 史料13)。なお、この時点は同研究所が財団法人化(昭和二十二年七月)を果たす直前である。
 第二の問題点は講師選定に関することである。昭和二十一年二月、道徳科学研究所復活後の十月以降、本部講習会をはじめ日本各地で地方講習会を開き、同二十三年度には社会教育講座は年四回(各一カ月)、地方講習会は全国六十二カ所、延べ受講者二万人という盛況をみた(『紀要』第壱号)。ここに講師の員数確保と資質を問う問題が浮上した。そのために講師たり得る指導者の養成が必至となったのである。